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木製の和食器

木製の器

木製の器としては「漆器」も含まれますが、塗りをせずに天然木の匂い立つような質感を出した木の器は工芸品として各地にあります。

杉や檜の香り、木目の自然な美しさ。青竹の清々しさ。
これは日本人の好みにピタリで、もっと和食器に使われも良さそうなものです。

器としてあまり普及しないのは木地素材独特の弱点があるからです。
耐久性の問題ですね。
水を吸い、湿気に弱く、割れやすく、傷みやすい。
この弱点は料理に使う器として致命的です。
なので、何らかの塗料で皮膜するとかの方法が施されるのです。

したがって木を器として用いる場合、様々な形体がある和食の器に適応させるために、塗りにしたり合成樹脂と混ぜあわせて弱点をカバーしたりすることで色々な形の器にしています。
木地のみで塗りも何も施してない工芸的な品はある種の用途(調理道具・什器など)には大変便利ですが、器としての範囲はやや狭くなってしまいます。

盛込み器・盛器・盛台・盛桶

和食で木目の質感を利用する器として現在最も使われるのは「盛器」でしょうね。ひと口に「盛器」と言っても、板に台に縁高、形態も俎板・高足、桶型、船型、実に様々です。陶磁器以外で素地が木製のものを以下に紹介します。(陶磁器は鉢と皿が主体です)天然木が高価になった事や木の扱い難さから、合板&塗り系が主流になっています。


高台盛器


手提げ盛器


隅切透かし盛器


井桁盛器

竹製の器

竹製品
・青竹  素地。見た目は清々しいが耐久性に問題あり
・枯竹 数年間自然に枯らしたもの
・炭化竹 炭化させたもの
・晒し竹  油を抜いてある
・煤竹(すすだけ) もっとも耐久性がある

出やすい面はよく水切りして乾燥させる事である程度防げますので、調理用具としてけっこう使われます。弾力がありしなやか点から、細くして編みこむ笊や籠が適するでしょう。

竹盛り器は多くが合成樹脂で作られていまして、天然竹の製品は少なく、一部の高級店くらいでしか使っていない状況です。樹脂製も便利ではありますが、やはり天然竹の風合いはなんとも言えない魅力がありますよ。

本物の煤竹は永い年月囲炉裏の煙で燻されて出来る品物なので1本数十万円以上する事がある。なので、その風味を人工的に出した物が多い。一般的に「枯れ竹」「晒し竹」「炭化竹」の製品が多く「本煤竹」はあまり見かけない。

煤竹製品

青竹
青竹器
青竹器

青竹器

弁当箱

虎斑竹
虎斑竹

虎斑竹専門店 竹虎

天然杉

スギは木材としてよく利用されています。
秋田杉、吉野杉、北山杉、屋久杉など地域品種も多いです。もちろん器としての利用頻度も高いのですが、皮膜しないと水分を吸ってしまうので白木は多くありません。少ない白木ものも使い方次第でしょうか。木のにおいを移さないように直に料理を置かないで掻敷などを敷く事です。

焼杉
焼きを入れることで耐火性、耐久性を持たせたもの。腐食しにくく、ある程度耐水性も高まる。


杉の器

ひのき

ヒノキ(檜・桧)は和風建築の木材として最高品質を誇ります。
木材としては耐水性があり、頑丈で長持ち。
なので料理に関係する製品も多く、上等とされます。
高級な素材の一つと言えるでしょう。
木曾檜、尾州檜、などが有名ですけども、全国で産します。


ヒノキの器

ひのき盛器


ヒノキ盛台

曲げわっぱ

スギやヒノキで作る曲物。昔の日本あった【行器 (ほっかい)】とか【折櫃】などを思わせる日本的な素朴さが魅力ですね。曲物は青森県藤崎町や長野県塩尻市など各地にありますが、有名なのは秋田杉で知られる秋田県大館市の曲げわっぱでしょう。


大館工芸社 大館曲げわっぱ 曲物

曲げわっぱは、木肌が余分な水分を吸収してご飯が美味しくなります。
弁当箱やお櫃にとても良いです。


曲げわっぱ 弁当箱

盆・膳・杉八寸・番重

膳や盆を器の一種と考えますと、長手盆とか番重、トレー、まな板、こね鉢ボウル等々調理関係の器具をも器に含めなきゃいけません。もちろん食卓を彩るものですから器の一種と考えてもかまわないと思います。ですがそういうものは上のカテゴリである「什器」という事になりましょう。

ここでは「料理を盛るもの」あるいは料理と直接触れるものを器としますので、器と呼べるのは「八寸」くらいのものだと考えますけども、一応下記で簡単に紹介しておきます。

八寸

八寸とは八寸(24㎝ほど)四方の杉盆で、懐石に使う折敷(おしき)でして、これも本来は器を載せる膳ですけども、これを器として前菜を盛るケースがあります。

杉八寸盆

杉八寸盆

八寸は元々神事に使うもので、神社などでは必ず見かけるものが原型。「お供え」をのせる敷物とか台ですね。

これを茶道に取り入れたのが茶祖利休だと云われています。
八寸角の杉のへぎ木地の角盆に飯・汁・向付を乗せて茶を提供する前の腹作り軽食としたのです。これが懐石料理の始まりということになっております。

時は流れ次第に八寸は酒肴を盛る器となりました。そして現在では「膳」という概念を超えて「八寸は和食の献立」になっています。

和食では八寸という言葉だけが生き残って肝心の杉四方膳は見なくなり、代りに八寸皿や前菜の盛器などが主流。これを「八寸」と呼ぶケースが増えました(つまり八寸くらいの皿や板、盛台などです)
料理を載せるのですから、白木よりも塗りが具合良いですからね。

ですが正式な茶事の世界ではまだ健在。
一部の料亭などでも使用されています。

器として使う場合は。使用する前に杉・竹箸と同じく充分に水を吸わせて湿らせておきます。水気を切って左手前に山の肴、右向こうに海の肴。二種を対角線に盛ります。もちろん曲物ですから「つぎめ」は写真のように向こう側です(丸い曲物は継ぎ目が手前)

盆と膳

盆と膳の違いは簡単にいえばトレイとマットの違いです。
膳は別名銘々膳と呼び、一人前の料理を載せる台で、日本膳は足つき。
盆は平たい容器の事で器を運搬する用途に使います。

現代は畳上で飲食することは減って座卓やテーブルが多くなり、日本膳は減少。代わりに卓で使える会席膳やマット類が増えました。

本膳系(日本膳・宗和膳・花車膳・政宗膳)


宗和膳


政宗膳

懐石盆


木製梅型懐石盆吟朱塗

大型盆(番重・脇取盆)

飲食業では古くから旅館などで使われております【脇取盆
これは宴会などの上げ膳、下げ膳に使われます。

番重(ばんじゅう)とは食品業界で運搬に使う箱(コンテナ)です。工場などあらゆる場所で使われてる樹脂製のコンテナ、アレの事です。これが脇取盆よりも大量に手早く、しかも飲み残しの液体をこぼしても大丈夫という事で合成樹脂になってからは飲食業でもよく使われます。もちろん仕分けや配達にも便利。


脇取盆


番重


番重 大

これは菓子用の小型番重です


菓子用番重

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