ガラスの和食器
水晶の様に輝くガラスの器を和食では【ギヤマン】と呼び「義山」の字を当てます。(茶器からの流れ)
表記の仕方は献立のバランスなど配慮して料理人の好みによって義山、ぎやまん、ギヤマン、と漢字やカナ、平仮名、色々です。器名まで献立に入れることはあまりないのですが、特殊な器は料理名に混ぜアクセントに加える場合もあるのです。
※ギヤマンとはオランダ語のダイヤモンドから付いた名で、江戸期に長崎で呼ばれ始めたものです。それまで日本にあった「硝子・ビードロ」と違ってダイヤモンドカットされたガラス器は当時の人々に深い感心を与えたようです。それ以降「議屋満無(ぎやまん)」の名で手彫り切子が広まり、江戸切子や薩摩切子へと発展しました。
和食に使えるガラスの器
白雪26 舟型
白雪9 正角深皿[大]
なびき 大皿
二色 豆皿セット 津軽びいどろ
花あられ 小鉢5様セット 庄内クラフト
縁金
主に茶懐石で使われる
琉球ガラス
空き瓶再生から始まった現代の琉球硝子。
吹きガラスである琉球ガラスは、南国の雰囲気を醸し出す独特な魅力があります。
江戸切子の和食器
玄関口として海外のカットグラス技術を導入して本格的に始まった日本の切子硝子。まず江戸に伝わり「江戸切子」になるのですが、当初は厚い色硝子の被せではなく、透明な透きガラスに細工をしていたようです。色被せガラスは、後発の「薩摩切子」が先だったわけです。
しかし幕末の動乱で消えた薩摩切子と違い、江戸切子は明治・大正・昭和と途切れることなく発展を続けます。それは民間から起きて庶民の物となった江戸切子と、殿様のお声がかりで起きた官製とも言える薩摩切子の違いだったかも知れません。
おそらく江戸切子が最も盛んだったのは大正から昭和の前期でしょうか。1970年代頃より「伝統工芸」への道を辿るしか道はなくなったようです。(昭和60年に東京都から、平成14年には国から伝統工芸の認可)
高度成長期が終わり、社会構造の変遷と歩を同じくして日本人の生活様式も大きく変わってしまい、世のライト化に迎合しにくい職人仕事である江戸切子は売れなくなってしまったのです。正確に言うと「安くで売れなくなった」と言うべきでしてね、要は「大量生産時代」に置いていかれたという訳でしょう。この構造は一事が万事で現代日本の病根にもなっている側面がありましょうね。つまり切子(本物の)は生き残るために「美術品化・高級化」する他なかったのです。
江戸切子の特徴は独特の切削模様。
伝統的な江戸切子は精緻な斜め格子模様が切られ、
それはまるで美しい魚の鱗のような感じがします。
なので、この模様を【魚子(ななこ)】と呼ぶようになったと云います。
(「斜子」「七子」の字を当てることもあり、7月5日は江戸切子の日)
(本来の魚子紋は魚卵の様に粒々を浮き出させたもの)
新鮮な大鯛が太陽光線でキラキラ輝くかの様な美しき光輝。
その自然の彩なす煌きこそ、江戸切子の真骨頂と言えるかも知れません。
他によく使われる文様は、矢来・籠目・菱・菊・麻の葉など庶民的なもの。それに隅田川の花火に因んだ花火紋です。(切子はほとんど城東地区で作らている。つまり隅田川に縁が深い)
たんに魚子を流した模様もあれば、上記紋を魚子で表現したりするわけです。
江戸切子は酒器として豪華ですが、料理を盛る器としては難しいです。このような自己主張の強い器にどんな料理を盛ればいいのか。普通はそうなります。
しかし手強いからこそ面白いんですよ。
「江戸切子に料理を盛れるかどうか」
そこが料理人としての腕の見せ所でしょう。
あるいは感性(センス)の有無をはかるテスターです。
ヒントは掻敷の使い方になりましょうか。
切子の文様と料理を「直接対決」させない事です。
江戸切子の鉢
江戸切子の和皿
江戸切子の酒器
薩摩切子
江戸切子の技術をメインに外国のガラスの製法も研究して幕末に鹿児島・薩摩藩で生産されたガラス器です。島津斉興が始めたとされる薩摩切子は驚くべき精緻さでその技術は非常に高く、現在でも完全な復刻は出来ていない程です。
従って当時の製品は骨董品として高値で取引されており、容易く手に入るものではありません。我々が買えるのは復刻品になります。幕末の動乱で消えてしまった薩摩切子は1980年代まで復刻されませんでしたが、現在は鹿児島県の伝統的工芸品として生産されています。
薩摩切子の見どころは何と言っても妖しいグラデーションの輝き。
シャープな光輝ではなく、ぼやけた感じです。これは厚い色ガラスの被せガラス生地に大胆で鋭角的な独特のカットを施すため起きる現象で、これが「色被せ薩摩のボカシ」です。同じように重厚でも江戸切子が貴婦人ならば薩摩切子は西郷さんの様な「武士」という感じですね。非常に男性的な雰囲気があり、それは「酒杯」によく現れております。薩摩ならではの焼酎グラスですね。
飲むのが惜しい様な銘焼酎を頂くときは、薩摩切子の猪口といきたいものです。
ボヘミアクリスタル
神秘的な輝きを放つボヘミアガラスは、チェコの伝統文化。長い歴史を持つ。繊細な模様と妖しい光輝が世界中の人々を魅了してきました。切子細工の先駆とも言えるでしょう(カット技術自体は古代からあります)
向付や酒盃として和食の席に置いても気品が光ります。
祝膳などの祝事の他、何かの記念日などに使うと雰囲気を盛上てくれる器です。
特に日本料理向けに造られたボヘミアはまず無いのですが、
形式にとらわれず、器自体の造形を利用してみると良いですよ。
珍味入れ(小鉢)に使ったり、八寸(前菜)を盛ってみたりと、アイデア次第です。