和食の香辛料
香辛料は大きく3種類に大別できます。
●ハーブ・スパイス→ハーブ(葉)を使うタイプ
(これの生を狭義で香草と呼ぶことが多い)
●シード・スパイス→植物のシード(種子)を使うタイプ
●スパイシー・スパイス→上の2種以外の箇所を利用するタイプ
(例えば皮、茎、花、つぼみなど)
用途もやはり3つに大別。
●辛味を利用する
●香りを利用する
●辛味と香気の両方を利用する
※付属的あるいは主目的として、
「腐敗防止」「臭み抜き」「害虫防止」、稀に「着色」など
日本料理でも、山椒や山葵など、古くからの香辛料がありますが、その種類は極めて少なく、使い方も例えばブーケガルニのように数種類をミックスさせるような用い方はなく、単体を僅かに使用するのが特徴です。
スパイスの代表とも言える「唐辛子」や「胡椒」を殆ど使わない事実をみれば、いかに和食が香辛料と縁が薄いか分りましょう。「からし」「さんしょう」などほんの数種類にすぎません。
素材の味を重視する日本料理において、舌を刺す辛味や鼻を突く刺激臭を敬遠するのはある意味当然だとも言えます。
仮に和食が香辛料を多用する方向に向かうとしたら、それは「すっぴんの素材が無くなっている証拠」だと言えるかも知れません。舌を麻痺させなきゃ食えないような食材しかないってことです。
香辛料はあくまでも「引き立て役」、それを肝に銘じて使用しなければ、なし崩しに和食は訳の分からぬ料理になって行くでしょう。
ブログ記事:手前板前・和食と香辛料
野菜等の”香辛(香り、から味)、刺激、色、苦味、渋み、酸味、えぐみ、アク”に関する成分について説明【食材の機能性成分】
山椒(さんしょう)
山椒は全国各地に自生するトゲがあるミカン科の落葉樹です。特有の辛味と香味があり、古くから使われる和のスパイス。
香辛野菜としての山椒
【木の芽】若い芽で、春の香味として天盛り・吸口等に
【花山椒】初夏に咲く花で、湯に通して料理
【実山椒】6月頃の青い実で、佃煮などに
スパイス(香辛料)としての山椒
実山椒がはぜたものを「割り山椒」「割れ山椒」と言います。
その皮を乾燥させて粉末にしたものが鰻の蒲焼でお馴染みの【粉山椒】になります。
朝倉山椒
兵庫県の八鹿町朝倉ではトゲがほとんどない山椒が。実が大きく風味が優れており、山椒の極上品として知られます。これが【朝倉山椒】です。
花椒(かしょう・ホアジャオ)
中国料理でも山椒はよく使われ、皮を四川料理に多用します。五香粉や花椒塩などに原料にする他麻婆豆腐などにも加えます。これは和山椒とは別種のカホクザンショウで「花椒」と言います。
紫蘇(しそ)
シソは大陸原産の一年草で、青ジソと赤ジソがあります。 シソアルデヒド(ベリルアルデヒト)という成分があり、これが防腐作用を発揮。また特有の香気も出します。
紫蘇の和食での使い方
【紫芽(ムラメ)】別名「赤芽」赤ジソの若い芽で「つま」などに
【青芽】ムラメ同様に使う
【束穂】穂ジソと言い、つまや天ぷらに
【花穂】穂ジソの花が開いた状態。束穂同様に使う
【赤紫蘇の葉】天然の着色料として梅干しなどに
【紫蘇の実】佃煮や塩漬けなどにします
【大葉】(青紫蘇の葉)
青ジソの葉は刺身などのつまとして広く利用されます。和食関係の調理者がこれを見ない日は無いほど使用頻度が高い。
蓼(タデ)
タデ科イヌタデ属の1年草で、「ヤナギタデ」という種類を食用にします。独特の辛味があり、殺菌作用もあるということで刺身のつま(紅タデ)に使われ、周年出回っています。
タデの若葉【あゆ蓼(葉蓼)】を擦り潰して作るのが、「たで酢」です。
紅たで同様に使う青タデ
エゴマ
エゴマ(荏胡麻(エゴマ)の葉。青紫蘇とほぼ同種で、大葉と同じように使います。
※エゴマは胡麻とは無関係のシソ科です
胡麻
ゴマは和食でも非常に幅広く使われる食材。香辛料と言うよりも一般の調味料として扱われます。種類は大雑把に3種。「金ゴマ」「白ゴマ」「黒ゴマ」
芥子
和芥子は、アブラナ科カラシナの一種「ワガラシ」の種子を乾燥させて作ったもの。
アク抜きの手間がかかるためマスタード(西洋カラシ)ほどには使われないが、洋ガラシにはない刺すような辛味があります。
唐辛子
トウガラシは熱帯アメリカ原産。世界中で使われる香辛料です。野菜として使われる甘味種とスパイスになる辛味種があり、スパイスは後者で作ります。
和食でも広く使われますが、歴史はそう古くなく、渡来は秀吉の時代。
七味唐辛子
七味唐辛子は、日本の香辛料としては例外的に多種類を調合したミックススパイス(ブレンドスパイス)です。
配合(ブレンド)内容:一味唐辛子、陳皮、ごま、山椒、麻の実、ケシの実、アオサ海苔
柚子
柚子はミカン科の果実で原産地は中国。
秋が近づくと青い柚子が出まわり、10月に入ると黄柚子に。あらゆる料理の香味付け兼彩りに皮のみを薄く削って使います。また甘味を加えてマーマレードやゆべしなどに。
これは粉末に加工してありますので、調味料などに幅広く使えます。
芥子の実
ポピーシードとして知られるケシの実は、加熱すると香ばしくなるので世界中で菓子などの香味付けに使われます。日本でも「松風」などに欠かせません。刺身にまぶして使うこともあります。
麻の実
アサの実は大麻の実ですが、発芽しないように処理されており毒性もありません。いなりずし、がんもどきなどに使用します。
和食の香辛野菜(香草)
木の芽
木の芽は山椒(さんしょう)の若芽で、日本の春を代表する香味野菜のひとつです。
独特の香りと素朴な美しさが好まれ、吸い口、天盛りなどに多用され、味噌と混ぜて「木の芽味噌」などに使われます。
直前に手のひらでパチンと叩くと香りがよく出ます。
※木の芽は形の揃ったものが商品となり、決して安いものとは言えません。そうした規格品にならない不揃い品を【地芽】と称し、比較的安すく入手できます(今で言う訳ありに近いか)。目的によってはこれが良い場合も。
わさび
わさびの根茎をすりおろしたものは刺身の薬味として欠かせない。
鮨、蕎麦も同様です。
葉と花も食用になり、湯に通して辛味を出して使う。
おひたしや醤油漬けなどに。
塩もみした葉と根茎を刻んで酒粕で漬けたものが「わさび漬」
ワサビの二大産地は長野県と静岡県です。
ショウガ
たんに「生姜(しょうが)」としか表示されていないものは「大ショウガ」で、一般に販売されいるのはこれになります。(別名;近江ショウガ)
これは収穫したものを貯蔵して翌年に出荷するいわゆる【ひねショウガ】ですね。
貯蔵すると辛味が強くなり、薬味として調度良いものです。
一方で、夏頃に収穫した白いショウガを【新しょうが】と言います。これは柔らかくさっと湯に通して甘酢漬けになど生食に近い食べ方をします。寿司のガリはこれで作ります。
根がまだ指先大の頃に早掘りして葉をつけたまま出荷するのが【はじかみ】になります。
はじかみとはショウガの古風な呼び方です。(山椒もハジカミという)
生姜を軟化栽培させ、若どりした「葉しょうが」
それより若い「筆しょうが」(矢しょうが)
これを酢にして焼き魚にあしらいます。
ひねショウガ
新しょうが
はじかみ
ニンニク
昔から評価の高いニンニクは大粒の「ホワイト六片」
粒が六個ある国産のニンニクです。
なかでも最高の品質なのが、青森県産。
新モノは初夏から出回ります。
ミョウガ
茗荷(みょうが)は日本独特の香味野菜
シャキシャキの歯ざわりと香りが特徴で、あしらいによく使うものです。
丸い形の蕾、「花ミョウガ」と、下の「ミョウガタケ」があり、ミョウガタケは山菜もありますが、茎を軟化栽培したものが一般的です。
花茗荷(みょうが)
茗荷筍(みょうがだけ)
三つ葉
三ツ葉はセリ科の香味野菜で、「せり三ツ葉」とも呼びます。数少ない日本原産の野菜で、栽培が始まったのは江戸時代。
三種類に大別でき、一般的に三ツ葉として売られいているのは【糸みつば】です。
水耕栽培で年中出まわっており、特に旬はありません。葉と茎が緑色なので「青みつば」と呼ぶこともあります。多少形が不揃いですが、香りと味には定評があります。
あとの二種類は「軟化栽培」したものが主流。
そのため、茎の部分が白くなっています。
根を切り取ってある【切り三ツ葉】 これは、秋から早春に需要が多く、正月料理にも欠かせません。
同じく白茎の軟化栽培でも、「土寄せ」で根のある【根みつば】
香りが良く、根まで食べられるのが特徴で、春先が旬です。
三ツ葉は香味を楽しむ野菜ですが、意外なほど栄養があります。とくにビタミンのバランスが優れておりβカロテンなどが目を引きます。これはニンジンの親戚だからでしょうか。
ビタミン系の栄養はもちろん、香りを残すため加熱はひかえるようにします。吸い物や茶碗蒸しなどでも、最後に加えましょう。
切りみつば
品が良いので正月の椀などに。
根みつば
一番栄養があります。
糸みつば
一般的なミツバで、茎も葉も緑色。
紅たで
紅蓼(べにたで)は、柳タデの変種。
本葉が出る前の幼芽を収穫したものです。
刺身のつまに使われ、ピリッとした辛みがある。
「たで食う虫も好きずき」の「たで」がこれです。
香りだけでなく殺菌効果も。
紅蓼の他に青たでもあります。
つまや薬味に。
芽ネギ
芽葱は、葱の種を密播きにし、軟化栽培したもの。
芽のうちに収穫して出荷する。
専用種もあり、これは香りが高い。(下の商品)
椀の青みにも最適
芽ねぎは、あしらいの他、にぎり寿司によく使いますが、寿司に握りやすいのは下の通常品です。
これはスポンジ部分が手で裂ける様になっており、3つに分けることが出来ます。分けた物をさらに二分割する事ができますので、それを「にぎり一貫分」にするわけです。
ここまでスポンジが付いたままで行えますから、非常に握りやすい。
「糸がき」やサビをかませて握ったら、ノリ帯でとめてスポンジ部分を包丁で切り落とし完成。お好みで梅肉などを。
芽ネギは意外と傷みやすい材料なので注意してくだい。
根以外の箇所に水気がつくのを嫌います。
めじそ
紫芽
紫芽(むらめ)、又は「赤芽(赤めじそ)」は、6~7月が旬になる赤しその若芽です。
一見すると「紅たで」と似てますが、大きさや色合いが異なります。紅たでと同じように刺身のツマなどに使います。
青芽
青芽(アオメ)は、青紫蘇(大葉)の若い芽です。
赤しその若芽が「紫芽(むらめ)」になります。
刺身のツマや薬味などに。
柚子
青ゆず
夏場のユズは緑色をしていて、同じ香酸柑橘で近縁種のスダチやカボスに似ています。
黄柚子のように果皮を風味付けに使用しますが、姿を生かしてあしらってみてもいいですね。
黄ゆず
柚子が黄色になると、いよいよ寒くなるんだなぁと思います。
香酸柑橘ですので酸味が強く、実をそのまま使うことはありません。実を使用するケースは果汁を調味料にしたり、丸ごと蜜煮にしたりジャムにしたり、柚べしという菓子にしたりします。姿で甘煮する場合は包丁の先で突いて竹串でタネを取り出すといいですね。
主にあしらい香味付けとして皮を使い、黄色い箇所だけを削ぎとって吸い口にしたり天盛りにしたり、おろし金ですったものを漬け物やお茶漬けに少量振りかけたり、お鍋のとき、ポン酢の脇にオロシ金ごと置いておくなんて使い方をします。
防風
防風(ぼうふう)は、海辺に自生するセリ科の植物で、正確には「浜防風」といいます。
春先の若葉が食用に適し、独特の香りを生かして吸い口、あしらい、ツマに使用したり、薄衣で天ぷらにしたりします。
下部の先端を落として整え、針で数センチ裂け目を入れて水に放ったものが「錨防風」です。