一年中使えるあしらい・刺身のツマ
南天(ナンテン)
南天はメギ科常緑低木。
赤い実がなるのは冬で、開花期は初夏ですが、防腐効果のある枝葉を主に使用するため、年を通してあしらいに使えます。
柊と同じく南天も邪気を払うとされ、ヒイラギを表鬼門(北東)に、南天の木は裏鬼門(南西)に植えて家の鬼門除けにする風習があります。
南天は年を通していつでも使えます。
しかも水に差しておくだけでかなり日持ちしてくれます。そのうえどんな料理にでもあしらいやすい。おそらく、もっとも使用されるあしらい枝葉でしょう。
小笹(ササの葉)
タケやササは日本各地に自生し、その種類は膨大なものであるといいます。笹の葉には抗菌作用があり、食べ物を腐敗しにくくしますので、ご飯ものなどを包む用途に使われ続けています。
小笹の場合はそういう用い方よりも「飾り」の用途がメインとなり、とくに笹飾りには欠かせません。つまり「あしらい用」は小笹になるということです。
松葉(マツ葉)
松の仲間は非常に多く、その形態も多岐にわたり、葉も色々と種類があるようですけども、我々が和食で使用する松の葉はアカマツの針葉(尋常葉)で2葉のものが殆どです。
立桂(タテカツラ・タテ゛カツラ)
立桂は笹のような防腐作用があるということで、ナマモノと一緒に飾ることが多い飾り葉です。
寿司屋さんのネタケースに入っている事が多いですね。剣山に立てやすく、構図が決めやすいせいか生け花でもよく使用されます。
しかしながら、この立桂がどのような植物であるのか正直よく分かりません、販売業者にも正確に知っている人がいないし、調べもつかないのです。
どう見ても杉の葉ですので、「その種のもの」という扱いなのでしょう。
管理人はこれを「ヒカゲノカズラ」や「ミズスギ」の一種であろうと考えますが、はっきり断言はできません。
ネタケースに飾るほか、通常の青掻敷としても。
使い終えたら洗って水を張った容器に入れておけば、かなりの期間使えるスグレモノです。
朴葉(ホウバ)
ホウノキの葉です。
緑葉は良い香りがし、殺菌効果があるため寿司や餅を包んだりするほか掻敷にもします。枯葉(干葉)は朴葉味噌、朴葉焼きなどに利用。いずれにしても大きさがあるため器としても使えます。
ラディッシュ
ラディッシュ(廿日大根/二十日大根)は、色合いが良く、生食に適しますが、加熱調理には向いていません。
(味噌やゴマとの相性は良い)
和食では刺身のけん、またはつまに最適です。
紅白ラディッシュ※種苗
モロキュウリ
もろ胡瓜は、若どりしたキュウリの総称。
味噌を付けて食べる「もろきゅう」に由来する。
かっぱ巻きの芯にすると美しい細巻きになる。
蕎麦芽(そば芽)
ソバはタデ科なので、若芽はあしらいにも使えます。
そばの生育期間は短いので、年を通して使用できます。かいわれ等と同様にお使い下さい。
デンファレ
デンファレ系の洋ランのうち、昔から料理やドリンクの飾りに使われている種類ですが、一般的にはたんに「デンファレ」と呼んでいます。
ベルローズ
ベルローズは食用に栽培されるバラですので、非常に用途が広いです。バラ独特の香りを活かしてあらゆる料理や飲料に利用します。もちろんあしらい目的でも使用します。
エディブルフラワー
【エディブルフラワー】とは、[ 食べられる花 ]という意味です。一般的に、パンジーとかキンセンカやスイートピーやナスタチウムやバラなど色々な食用可能な花々を数種類ミックスしてあります。
食べる用途だけではなく、その美しさをいかして料理の演出にも使用できますね。
干し菊花
板状に乾燥させた菊花です。
生花は数日しか保たないため、使い勝手はこちらのほうが良いかもしれません。戻して使用します。
小菊
小菊、別名「つま菊」
刺身飾りの定番になっています。
食用花ですので、花びらは食べられます。
オカヒジキ(陸鹿尾菜)・ミルナ(水松菜)
おかひじき(陸鹿尾菜・水松菜)は、もともと海岸に自生する野草。栽培物が山形で「山菜」として売りだされて以降、各県でも栽培が盛んに。栄養豊富な野菜です。
面白い姿形と歯ごたえを利用して一風変わった料理ができます。
軽く茹でてから使うのが基本。
桜花・桜葉塩漬
桜花の塩漬けは主に八重桜の花を塩と梅酢で漬け込んだもので、桜湯にして香りを楽しみます。また和菓子などのアクセントにも使われます。
葉の塩漬けも良い風味があり、こちらは伊豆のオオシマザクラの葉を漬けたものが多いようです。これもまた和菓子の桜餅につかったり、春の料理にあしらったりします。
菖蒲(ショウブ)
菖蒲はショウブ科(サトイモ科)の単子葉植物で、よく混同されるアヤメ科のアヤメ(菖蒲)とは無関係です。
縁起の良い植物とされ、端午の節句に飾ったり、浴槽に入れて菖蒲湯にしたりします。
竹の皮
竹皮はその丈夫さを利用して食品包装用途にすることが多いですが、アイデア次第で使いみちは広がります。乾燥ですので水で戻してから使用します。
竹の葉
強飯や大き目のちまきなどを包むには「竹皮」がよいのですが、小ぶりのチマキとか点心などには葉の方が向いています。基本的に笹と同じですので用途も笹に準じます。
柏の葉(カシワの葉)
柏はブナ科の落葉中高木。
大きな葉は良い香りがし、柏餅に使われます。
落葉しない葉なので縁起が良いものとされ、柏餅だけではなく、掻敷とか器とか色々使ってみるといいですね。
青葉は春から夏、茶葉は秋から冬という感じで使い分けてみてもいいでしょう。
水前寺海苔(スイゼンジノリ)
淡水産の海苔です。
熊本県の水前寺・江津湖で発見された淡水産藍藻の一種で、現在では「水前寺のり」が採れるのは福岡県朝倉市の黄金川のみの様です。
塩水漬もありますが、乾燥品が一般的。
香りや味は殆どありません。黒い色と歯ざわりを楽しむ料理のアクセント。お刺身のつまや、酢の物、前菜に。もどして使用します。
莫大海 (バクダイカイ)
莫大海 (バクダイカイ)は、アオギリ科(アオイ科)の落葉高木樹である「伯樹(ハクジュ)」の乾燥果実です。 (※主に中国産で「胖大海(ハンタイカイ)」ともいいます)
小さな果実が非常に大きく膨張することから「莫大海」という名がついたとも云われます。
通常は「ばくだい」とも呼んでいて、主にお造りのツマに使用します。
水やぬるま湯、あるいは番茶などに浸け落し蓋をして戻し、皮と仁(タネ)を除去して海綿状に膨張した外種皮を使用します。
酢の物や寄せ物に使うこともありますが、それ自体に味はありませんので、独特の口当たりを壊さぬように配慮しつつ調味で加減します。
板ワラビ
板ワラビは、わらび(蕨)のデンプンを板状に固めて乾燥させたものです。
水で戻し、短冊形に包丁して刺身のそばに添えてツマとします。用い方の感覚は水前寺海苔に似ており、酢の物や椀などにも使用できます。
枸杞の実(クコの実)
ナス科の落葉低木であるクコの乾燥果実です。
枸杞子(くこし)とも呼ばれ、一般的には薬膳とか果実酒に使われています。
目先を変えてツマなどあしらいに使ってみても面白いでしょう。莫大と同じくもどして使います
白木耳(白キクラゲ)
料理でよく使われる木耳(キクラゲ)の白です。
「銀耳」ともいい、デザートやスープに使われるものです。
不老長寿のキノコともされ、また銀髪をイメージさせる物ですから、敬老の宴会などでツマにしてみるのもいいでしょう。
岩茸(イワタケ)
岩茸(イワタケ)は「石茸」とも表記し、キノコの仲間と思われますが、植物ではなく地衣類イワタケ科の「菌類」になります。
栽培が困難である珍しい食品で、山の珍味と言えるでしょう。食感は木耳に近く味はありません。歯ごたえとやや苔むした芳香を楽しみます。
少々の塩を加えたぬるま湯で戻し、汚れと裏側のうぶ毛をこすり落として包丁します。
酢の物その他の料理では味を付けますが、ツマに使用する場合、その必要はありません。
トサカノリ、オゴノリ
海藻類はテングサで作る寒天にみられるように、その多くに粘性物質があります。加熱して冷ますと固まる性質ですね。
これらの粘性物質は水溶性の食物繊維によるものであり、カラギーナン、アルギン酸など粘性多糖類は健康維持に欠かせない重要な働きをします。(凝固に関してはアガロースやアガロペクチン)
この他にも海藻類は豊富なミネラル類とビタミン類を含んでおり、健康食品としても大いに注目されています。
海藻加工品をツマに使う場合、「味付けではないこと」「固形として形を保てること」などの条件をクリアした物を使うことになります。
水前寺海苔も海藻加工品のひとつですが、あのように形を保っているものでないとツマとしては使えません。
一般的にツマとしてよく使われているのは「トサカナノリ」や「ワカメ」などです。
トサカノリは乾燥品と塩蔵品があり、「青とさか」「赤とさか」「白とさか」などの種類が。これらはミリン科の鶏冠海苔を加工したものです。
「オゴノリ」も刺身のツマに向いており、これはオゴノリ科の海髪海苔を緑色に加工したものです。これも白色に加工した商品があります。
料理飾り・演出小物
瓢箪(ひょうたん)
瓢箪(ひょうたん)は、ウリ科の「夕顔」の変種です。
ユウガオと言えば実を削って「かんぴょう」に加工するウリですが、ひょうたんは一般に食用にはしません。
(小さくて苦味がないものは漬物などにして食べられますが、普通のヒョウタンは中毒の可能性があるので食べてはいけません)
どうしても酒徳利を思い描いてしまう面白い形。色々な場面で飾り物にしてみましょう。