貴醸酒
人は30歳を過ぎたありくらいから、自分が秘かに贔屓にしてる芸能やスポーツ人がブレイクするのを見る。そういう経験をするようになるもんです。
そんときの気持ちは「嬉しいけど、寂しい」って変なもんですよね。
最近ある漫画に紹介されて名が広まりつつある酒がありまして、それが【貴醸酒】です。おいらの秘蔵酒のひとつでしたんで、なにやらその「複雑」な気持ちになってるんですわ。
この貴醸酒、日本料理の研究文献としても重宝する『延喜式』(927年)に記されていた古代酒の製法「しおり」を参考に、国立醸造試験所(国税庁)が昭和48年に開発したものです。
普通酒は酒米1に対して酒造水(蔵が使う天然水)1.3で作りますが、この水の代わりに「酒」を使って作った濃厚な味の酒です。
味は独特なんで、誰もが「美味い」って酒ではありませんけども、おいらは好きですね。深い「さわり」もさることながら、名前もいい。
日本酒の製造の一工程「醸す」ですが、この言葉は原始的な酒【口嚼ノ酒(くちかみのさけ)】から来てます。
稲作が始まった太古から酒は存在したと考えられてますが、女性が生米を噛んで作る訳ですなその酒は。
貴醸酒って名は、幻の女王卑弥呼が自ずから作ったような感じがするじゃないですか。(ロマンってよりも妄想?)
般若湯
何かと閉鎖的な日本酒の世界。
もう少し単純化して裾野を広げてもらいたい。
そうして若い層にその美味さを認識してもらわないと、日本酒も「外国の物」になっていく気がします。
日本文化が国内で消えて、外国人に教えられるって現象が、【御神酒】の世界でも起きるなんて冗談じゃねぇですからね。
黄金色になっていた銀杏も消え去る寒の頃の風景を窓外に眺めながら、引き締まった身
体に熱い燗酒をチビリチビリと流し込む。
それが日本の粋ってもんです。
※「般若湯」とは「日本酒」という意味の隠語です