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春が旬の魚

春の魚

マダイ

真鯛(まだい)は、スズキ目タイ科タイ属。 数々の「◯◯だい」とタイの名が付く魚(一説では200種以上)の中で正真正銘の本物のタイ。 「ほんだい」「おおだい」とも呼ばれる。

旬は産卵で深場から沿岸に寄ってくる3月から6月。特に美味しいのは体色が桜色に染まり「桜鯛」とも呼ばれる3~4月。 秋の終わりから冬場にかけても美味しく、ほぼ年間を通じて美味だが、夏場は脂肪が落ちて味もやや低下する。

近い種に【キダイ】(れんこだい・かすご)と、【チダイ】(ひだい・かすご)の二種がいて、真鯛の代用にもされるが、よく見ると両者とも真鯛の風格が無いので見分けがつく。
※マダイの稚魚もカスゴという

縁起物としては大きなマダイが好まれるが、食べて美味しいのは「目の下一尺」、つまり全長が40センチ程度のサイズである。

魚の形をしている胸ビレの付け根付近の骨を「タイのタイ」という。

魚の王様って冠は伊達じゃありませんで、鯛は和洋中まったく料理を選ばず、いかなる一品にしても旨く食べれる稀有な魚です。旨味成分イノシン酸が沢山ある身は「腐ってもタイ」って言葉を大袈裟に感じさせません。硬い骨以外はウロコも含めてすべて食べれます。

※上記は「天然鯛」のことで、養殖の場合は特に旬はありません。
一般的に「真鯛」とだけ表示されているものは養殖で、天然は必ず「天然」の表示と「産地名」があります。

鯛は「魚相」に個性があり、顔つきだけでオスとメスがすぐに分ります。デコっぱちで目つきが悪く凶暴そうな顔(精悍)をしてるのがオスで、メスはオットリ優しい顔をしています。
また、養殖はオスメス共に天然のような「引き締まった厳しさ」がなく、いかにも「箱入りのボンとお嬢さん」という感じ。尾の切れ込みとか色などでも判別できますが、顔だけで天然と養殖が区別できるのです。


天然マダイ


真鯛

カスゴ(春小・春子)(小鯛)>>

カツオ

カツオ(鰹、松魚、堅魚)スズキ目サバ科カツオ属

属が異なる近縁種(ソウダガツオ、ハガツオ、スマ)と区別するために「ホンガツオ」「マガツオ」と呼ぶこともある。

春が旬なのはいわゆる「初ガツオ」であり、黒潮に乗って日本に近づいて来るので「黒潮ガツオ」ともいいます。

北の海で十分に餌を摂って南下する秋口(三陸で9月頃穫れる)のカツオが「親潮ガツオ」で、これが「戻りガツオ」と呼ばれるもの。非常に脂がありますので、この秋ガツオを「トロガツオ」と呼んでいるようです。

今では脂の多い秋の戻り鰹が人気で値も高めです。でもやっぱり春を運ぶ「初ガツオ」は捨てがたい。脂肪は少なめですが味に「春の青さ」がありますからね。

初ガツオは土佐に水揚げが始まる頃の春先鰹をさします。
鰹は鮮度低下が極端に早いので、加工した商品が大変多くなりますけども、魚捌ける方は丸鰹でしょう。鰹をおろしてタタキまでに出来れば、もう板前と庖丁の腕は変わりません。鮮魚ってのはやっぱり冷凍パックとは違います。


高知 足摺沖産 天然一本釣り カツオ

アイナメ(愛魚女)

あいなめ(鮎並、鮎魚女、相嘗、愛魚女)

カサゴ目アイナメ科アイナメ属

別名:アブラメ、アブラコ、ネウオ、シジュウ

「ネウオ」とも呼ぶように動かない魚であり、「アブラ」が付くように白身魚では脂が多い魚である。 棲息場所等で色や模様に違いが出るが、別種ではなく同じアイナメであり味の違いはない。

料理魚として高級で、品が良く身離れの良い身は主に「椀種」に使用します。

もちろん刺身、洗い、焼き物、揚げ物など他の料理でも美味しく食べられます。

冬から春に脂がのるアイナメ。夏に入る直前までが旬です。
「くじめ」や「ほっけ」などそっくりの魚がいますが、見分け方は尾の先っぽの形でして、ここがアイナメは真っ直ぐ。他の種は丸かったり、深く切れ込んでますので見分けがつきます。


あいなめ

メバル(目張)

メバルも春を告げる魚。
早春に人気の釣魚でもあります。
弾ける白身は煮付けに最高。
なにしろ煮付けのチャンプクラス「メヌケ」の一族。

カサゴやソイ等との見分けは大きな目。口もやや大きめ。
陸釣りできる「黒」のほうが沖の「赤」よりも美味いです。


メバル

ホウボウ(魴鮄)

ホウボウは、白身のわりに脂が多いので味が濃厚な方です。しかしあっさりとした上品な旨味になり、くどさはない。なので比較的高級な素材として扱います。

鎧兜を思わせる姿、飛び魚と同じよにうに羽を広げて飛翔するがごとき姿からか、昔から縁起の良い魚ともされます。愛媛の宇和島などでは「お食い初め」に使っているようです。

冬場から春にかけて美味しくなる魚。


ほうぼう

イシダイ(石鯛)

石鯛(いしだい) スズキ目イシダイ科

別名:シチノジ、ハス、サンバソウ、シマダイ(幼魚)、クチグロ(老成魚)

イシガキダイと並んで引きが強い魚で、磯師の目標ですが、人に慣れ易く芸まで覚えるって魚なのに簡単には釣れません。 ことのほか美味く、刺身通なら選ぶ魚のひとつでしょう。

春から夏にかけて旨味が増していきます。
食べ頃サイズは「しまだい」を卒業するころ。
縦の黒い縞模様が消えかけているイシダイが旨いです。完全に真っ黒になり「くちぐろ」サイズになるとやや野性味が増し大味に。

一般的にはお造りや焼き物。
少し大きめなら〔洗い〕が絶品。
コリコリとした食感は初夏の味。


イシダイ(石鯛)

シロウオ(白魚)

シロウオは、イサザとかシラウオとも呼ばれていますが、スシ種などに使われてる白魚(しらうお)とは別の魚です。

いわゆる「踊り食い」をやるのは、このシロウオの方。
かき揚げや卵とじなど料理法は共通します。

早春を告げる、季節感のある魚です。



イサザ

サヨリ(針魚)

サヨリ(針魚、鱵、細魚) ダツ目・サヨリ科

別名:クチナガ、サイチ、ハリウオ、カンヌキ

美しい皮目と白身がコントラストになって見た目が上品なので、刺身や昆布締めなどにされるが、油と相性も良く、天ぷらも悪くない。

高級感のある魚だが、旬には量が穫れるので値段はそう高くない。
代用にされるホシザヨリ類はあらゆる点で「似て非なる魚」なので、同じようには使えません。そっくりではあってもゴツゴツ感はダツに近いので区別ができます。

春を告げる魚と言えばサヨリ。
料理はなんでもOKですがやはり刺身で頂きたいものですね。その時に海水くらいの塩水に入れて洗ってみてください。アクが抜けて甘みが出ますよ。

春を代表する魚ですが産卵期は2度で、秋にも旬を迎えます。けども、実際のとろこ秋にサヨリを仕入れる料理人はあまりいません。「季節外れ」のイメージがあるからですね。

釣り人の間では小型のサヨリを「エンピツ」、大きいのを「カンヌキ」と呼んでいます。

しかしサヨリは大きくても35センチ程度。それ以上になると別種だと考えられますので、カンヌキとサヨリの判断は難しいところ。
たとえば50センチを超えるようであれば「ホシザヨリ」という別種だと思ったほうがいいですね。

釣る人は大きいのが良いのかも知れませんが、料理用途からすれば、カンヌキの度が過ぎると使い物になりません。 「品」もあるし、小骨の問題もあり、この辺は「コハダ」と事情が似ています。まぁ、「サヨリらしく売れる」のは30センチが限界ですね。

サヨリ
サヨリ


サヨリ

サワラ

鰆(さわら)
・スズキ目サバ科サワラ属
・旬は産卵期の春から初夏

・美味しい時期
主産地である瀬戸内では4~5月
関東では1~2月の「寒ざわら」
駿河湾あたりでは晩秋から初冬

出世魚

出世魚のひとつであり、体長50センチ以下の若魚を【サゴチ】と呼ぶ(関西では「サゴシ」)
70センチを超える成魚を「さわら」(西日本ではヤナギとも呼ぶ)といいます。

食べ方

身にクセがなく非常に美味しい魚で、どんな調理法でも食べられます。代表的な料理は「西京漬け」や「祐庵焼き」や「照り焼き」

その他

切り身は血合いの色と身割れの有無などで判別し、姿のサワラは斑点模様が濃くクッキリしているものが新鮮。(模様は鮮度低下で消えていく)

同じサワラ属の仲間にそっくりの魚が数種いて、慣れないと区別ができないことがあります。分からない時は「胸ヒレ」の先端を見てみます。本サワラはヒレの先端が尖っており、他のサワラは丸っぽくカーブしています。

「サワラ」という名前は「狭い腹」が変化したものだと云われます。(狭=「さ」)
つまり体の姿形から付いた魚名です。

サワラ
サワラ

このサイトではマグロを冬に、サワラを春のカテゴリにしていますがこれは正直微妙な話です。マグロが春でサワラが冬ってのが経験則。まあ一概にどうこう言えませんけど。

それほど1~2月のサワラは美味しいって事で、関東では昔から『寒ざわら』は別格でした。しかし近海ものはもう超高級魚になってしまい種苗放流モンさえ魚影が薄い。一時よりは回復しているとは聞いていますが、昔みたいにトロ箱でダーンって並ぶ姿はもうありません。(もっとも今はみんな発泡でトロなんてもんはないですが)

関東者だけじゃなく瀬戸内の人も鰆が大好きなんですが向こうの方もやはり量は獲れない。結果として値段は驚くべきものです。


さわら amazon

さわら 楽天

ニシン(鰊)

昭和30年以前には北海道で「ニシン御殿」があちこちに立つほど漁獲の多かったニシン。実に99%以上減少してしまい、うたかたの夢。その原因はよく分かりません。最近は稚魚の放流などの努力によって少し魚影が戻りつつある様です。

他の青魚と同じく不飽和脂肪酸が多く、イワシでは食べ足りない人に向いている魚です。身欠けニシンは生より栄養が凝縮してますのでおすすめです。しかしやはり焼けた脂を堪能するなら生か干物です。

生の入荷は安定しておらず基本的に「漁待ち」ですが、本来魚とはそうしたものです。


鰊(にしん)

マトウダイ

まとうだい(馬頭鯛、的鯛) マトウダイ目マトウダイ科

別名;「マトウ」、「クルマダイ」「マトダイ」「モンダイ」、「モンツキウオ」、「カネタタキ」「ツキノワほか。

旬は産卵期の春から初夏。

美味しい魚として世界中で食べられています。
日本でも各地で釣れ、海辺の地域では人気が高い。

関東ではあまり馴染みがありませんが、関西料理やフランス料理では高級魚として使用されます。
コリコリした白身は刺身でも旨い。また、カワハギのように「キモ」が美味しい。

一般的には淡白で綺麗な白身を椀物や煮物、焼き物などに。

マトウウダイ科の仲間に外見がよく似た【カガミダイ】がいますが、カガミダイには「的のような黒い斑紋」が無いので見分けるのは容易。

馬頭鯛というのは「外見のウマズラ」から。的鯛は弓の的に似た黒斑から。和名は馬頭鯛(まとうだい)です。


的鯛

タカサゴ(グルクン)

グルクンは沖縄の県魚。
和名ではタカサゴ(高砂)です。
旬は春。

沖縄で食べ物を売る店に入れば、まずコレがあります。定番は「グルクンのからあげ」。美味いですよ、かなり。

水分が多少多めですが、新鮮であれば刺身でもイケます。沖縄の魚の中では比較的クセがなく、食べやすいのがグルクン。高タンパク低脂肪。

カリウムが多いので日頃塩分が気になる方にもおすすめ。


グルクン

サクラマス(桜鱒)

桜鱒はヤマメの降海型です。ママス・ホンマスとも。
サツキマスはアマゴになります。

桜マスという名は桜の季節に旬を迎える魚だからって訳じゃなく、雄の体に出る婚姻色が桜色だからだそうです。

刺身にする事が多いのですが、やはり鮭類は焼物が旨いと思いますね。


サクラマス

ヤマメ(山女魚)

ヤマメはサクラマスの陸封型であると言われますが、この二種にはっきりとした区分をつける事はできません。ほぼ同じものが条件によって降海型と陸封型に別れるようです。アマゴ、イワナ、サツキマス、これらも微妙なところです。

釣り師にとっては様々な思い入れがあるでしょうが、食べる側としては味もほとんど遜色というものがありません。まぁ天然物はほぼ食べられませんけどね、山村に出ない限り。

岩清水の清流で育った独特の芳香は時々「懐かしい」味覚の郷愁と言いましょうか、無性に食べたくなる時があるもんです。

旬は桜マスに準じて春。

yama

ヤマメ

フナ(鮒)

フナは食用としてより「釣り入門」とか観賞魚としてお馴染み。

今ではもう口にした事のない日本人も多いと思われます。

フナ食は、滋賀の「ふな寿司」を筆頭に各地に僅かながら郷土料料理の形で残っておりますが、それも珍味としての部類です。

「きんぶな」「ぎんぶな」「げんごろうぶな」、それに鮒寿司に適する「にごろぶな」。いずれにしても激減しているようです。これもまた将来は絶滅してしまうのでしょうかねぇ。

子持ちブナ(春~夏)を甘露煮にしたり、洗いにしたり。
春を感じるために食卓に出してみたい食材ではあります。


フナ

観賞魚

ホタルイカ

ホタルイカ〔ツツイカ目ホタルイカモドキ科〕
別名マツイカ、コイカ、新子イカ等
旬は春先の産卵期。5月の連休くらいまで。


生ホタルイカ

春の貝、海老、蟹、海藻

アカ貝

赤貝(あかがい)はフネガイ目フネガイ科の二枚貝

よく似た佐藤貝(バチ・白玉)と区別する意味もあり、「ホンダマ」「黒ダマ」と呼ぶこともあります。

旬は春先。

国産の出回り期は12月頃と3月頃、産卵を終えた6月頃

※産卵期は貝毒を発生するのでワタを食べてはいけない

国産のなかでも極上とされるのは宮城県名取の「閖上(ゆりあげ)赤貝」ですが、すしネタとして非常に人気で品薄なため一般に出回ることはありません。

日本産の魚介は様々な理由で、他の地域に比べてクセがなく非常に美味で知られます。

なかでもとりわけ「国産」が美味いのは貝であり、わけても二枚貝は特別製としか思えないほど。同じモノなのに何故か日本産は美味いし品がある。

ところが皮肉なことに海辺の開発で一番影響を被るのがその二枚貝で、ハマグリなどは消えてしまいました。

赤貝も似たようなもので、年々国産モノを見る機会が減っていくばかり。やはり他の貝と同じく、国産と輸入物は外見だけは同じでも中身はベツモノ。しかし国産の回復は容易ではないでしょう。


瀬戸内産 天然赤貝

アサリ(浅蜊)

アサリはハマグリと同じマルスダレガイ科の貝です。

ハマグリと何がどう違うって話ですが、見た目は当たり前だが違いますな。実はね、強さが全然違うんですよ。ハマグリは汚染にまったく耐えられない貝なんで、国内ではほとんど全滅状態。韓国中国からの輸入で凌いじゃいますが、あの二国も今や汚染大国。いつまで続くやら。

アサリ
アサリ

ところがアサリって貝はタフなヤロウでしてね、干潟や人工の渚なんぞでも平気で生きてます。春になると湧き出すように大量に砂浜に現れる(日本の海浜がまともな時代ですが)様子から名前が付いたみたいです。あさり(漁り)

貝の特徴は何と言ってもその栄養の好バランス。
ミネラルとビタミンの配合は完璧に近く、ヒトって生き物を養う目的で天が与えてくれた食べ物としか思えないほど。古代の貝塚を連想して下さい。ミルクや卵やレバーと並ぶ最重要食品です。

アサリの食べ方

江戸前アサリ深川丼
アサリ深川丼
アサリ深川丼

おいらが好きなのは貝汁をきかせて炊き込んだ深川丼なんですが、料理屋として出すのは酒蒸しが多くなります。

酒蒸し

普通はフライパン等で酒をかけて蓋をして蒸すってのが常道ではあるんですが、料理屋で出す場合はほとんど汁物になります。吸い物くらいの味にして出す汁にアサリが入ったのを酒蒸しと呼ぶ事がけっこう多いです。

アサリ酒蒸し
アサリ酒蒸し
アサリの味噌汁

和食に使う場合はむき身にして色々手を加える場合が多いですけど、これは見た目は良くなるものの、栄養的にはちょいとね。味噌汁にするのが一番おすすめできる食べ方だと思います。

アサリ味噌汁
アサリ味噌汁

モノが良ければ単純な「焼きアサリ」が一番美味しいかも知れません。


伊勢志摩産アサリ

大アサリ

ところで、アサリの名が出たついでに愛知、岐阜、三重中部三県の方に御馴染の大アサリも紹介しときましょう。

「大あさり」で通っていますが、正確には「うちむらさき(内紫)」と言います。丹後では「ハシダテガイ(橋立貝)」の名で呼ばれます。


大アサリ

ときどきこの内紫(大あさり)と「鬼あさり」を混同する方がいますが、オニアサリはまた違う貝です。あと一種似たのに「カガミガイ」ってのもいます。

しかしこの二種は一回り小さく、よく見ればすぐに分かります。
15㎝にもなろかという大きさが大アサリの特徴。

けっこう濃厚な味のする貝でして、三河や知多に行けば必ず食べます。 中心から包丁で二つにぶった切って、ミリン醤油で網焼きにするだけですが、焼きたてはなんとも言えず旨いもんですよ。ただ焼きすぎたのは固くなってしまいます。

春の陽気になりましら家族で潮干狩りにでも出かけてアサリをたっぷり持ち帰りましょう。そして貝をガツガツ食って下さい。これほど人様に勧められる食べ物ってのも珍しいもんです。

*砂出しはしっかりしときましょう。
3%の塩水(500mlペット一本の水に塩大さじ1)
一番いいのは貝がいた海の水)で静かに寝かせておきます。
*冷凍もOKです。砂を吐かせたら冷凍用の袋に密閉して冷凍します。ボイルしてから冷凍するより、生きたまま生冷するのがはるかに良いです。

ハマグリ(蛤)

ハマグリが二枚貝全体の呼称だったのは遠い昔の事。

「はまぐり」というのは古来二枚貝全体を指す言葉でした。それは「蛤」という字に残っております。

自然の海岸線の消滅で瀬戸内と九州の極一部を除き国内のハマグリはほぼ絶滅しています。
今国内で流通しているほとんどは「シナハマグリ」という種で殻に艶がありません。しかし種苗を国内の浜で育成しているのでこれも「国産」になります。

最近「白はまぐり」の名で千葉県産のものが多く出回っているのはハマグリとは関係のない北米産のホンビノスガイ


ホンビノスガイ

加工用にはベトナム産の「ハンボリハマグリ」

「チョウセンハマグリ」は名前の通り「朝鮮産」という意味ではなく品種の事です。
国内で育ち美味しい事が知られていてこれは「国産」があります。

「地はまぐり」の表記は輸入物には禁止されています。

なにもかも国産が良いと言うつもりはなく、昔を懐かしんでいる訳でもありませんが、一度はやはり地ハマとはどういう味なのか食べてみておいた方がよいと思います。

同じ科の「ちょうせんはまぐり」「しなはまぐり」
※「ちょうせん」とは韓半島を指す言葉ではなく、「変わっている」という意味であり、味も悪くはない。貝殻の色は濃い目。
※「シナハマ」は少し味が落ちる。
シナは貝殻に「Wの連続模様」があるので見分けられる。


三重県産桑名産 天然大はまぐり

ホタテ貝

帆立貝(ほたてがい)はイタヤガイ科に属する二枚貝。

イタヤガイ科の仲間は数種あるが、ホタテは低水温を好むため北の海でしか繁殖できないので、南方系はホタテとは別種になります。

東北より北で盛んに養殖され、出回っているホタテの殆どは3年貝くらいでサイズは12~13センチ。 オホーツク海産の天然物は20センチほどになる。

「美味しくなる時期」、つまり旬は冬から春。

※外見がよく似た貝に「いたや貝」「あかざら貝」「ひおうぎ」があります。
ヒオウギ(檜扇)の特徴は赤・黄・橙・紫の殻色。
帆立の主産地が北海道であるのに対し、ヒオウギは千葉県から南に棲息する貝です。


帆立貝

サザエ(栄螺)

サザエはツノがあるものと無いものがあり、ツノのある方は波が荒い外海で、ない方は内湾でとれます。

ツノのあるなしに関わらず、小さなものを「姫さざえ」と呼ぶことも。 沖縄など南洋でとれる「ちょうせんさざえ」は姫でなく「玉貝」という貝です。

食べる餌の種類(海藻)で殻の色が違ってきます。
ワタの先端部分の色がクリーム色ならオス、緑色ならメス。


サザエ

本ミル貝(海松食)

海松食(みるくい)とはミルガイの正式名称です。
マルスダレガイ目バカガイ科

一般にミル貝として売られているものは、「白みる貝」で、これは実はミル貝とは関係ありません。

本ミルはある意味アワビに匹敵するかそれ以上の高級貝。歩留まりから言えば、アワビ以上かも知れません。

希少性から、代用の白ミルでもやむを得ないのかも。
しかし本ミルのお味は別次元です。


本ミル貝

※ナミガイ(白みる貝)
普通の鮨屋でミル貝として出される貝はこれです。
慣れ親しんだ味かも知れず、むしろこちらの方が好きな方が多いかも。
ヒラメのエンガワなどと似た例と言えましょう。
お値段も手頃で、そこそこに美味しいですよ。
ちなみに白ミル(なみがい)の旬は冬で、「冬の魚」で紹介しています。

マテガイ(馬刀貝)

マテガイは、馬刀貝という字の通り面白い形をした二枚貝。
「あかまてがい」「えぞまてがい」という二種も同じように扱われます。
意外と甘味があり、クセもない貝です。
殻ごと焼くとその良さを引き出すことができます。


マテガイ

トコブシ

とこぶし(床伏・常節)は、外見上ほとんどアワビと同じ。
違いは殻にある穴の周辺と穴の数である(トコブシの穴は6~7個)

別称「流れ子

産卵期は夏。春の大潮あたりから旬をむかえる。

アワビと同じように料理できるが、煮物が美味い。


とこぶし

ホッキ貝

ほっきがい(北寄貝)といのは実は俗名。
正式な和名は「うばがい(姥貝・雨波貝)」と言います。これはおそらく貝殻の様子などからの命名でしょう。 寒い北風で海岸に打ち寄せれることから北寄貝。
この名前の方が通りがよく、姥貝という名は知らぬ人が多い。
(名称に関しては、異説も多い)

俗に「舌」という部分を寿司種や刺身にします。
さっと加熱すると淡紅色になり、この状態で売られてたりします。

産卵期は6月ごろで旬は春。


北寄貝 「舌」


北寄貝

アサヒガニ(旭蟹)/スパナークラブ

昔、築地にこのカニが入荷するのは殆どが九州産でした。
別名の「カブトガニ」や「ヨロイガニ」と呼ばれる事が多かった気がします。
どちらにしても珍品扱いで稀にしか見なかったカニです。

可食部分が多く相模湾からインド洋まで幅広く分布してますので輸入物は常時あります。足に身はないですが、そのぶん甲羅には身肉がぎっしり。ワタリガニタイプです。身肉はエビの様に甘い。「スパナークラブ」とはこの蟹のオーストラリアでの呼び名。日本での旬は春。


沖縄伊平屋島産アサヒガニ(スパナクラブ)

ワタリガニ

蝤蛑(ガザミ)という和名よりも「ワタリガニ」の方が通りが良く、比較的安価で庶民的なカニです。

料理法は、塩茹で、蒸しガニ、味噌汁、揚物、炊きこみご飯、など。
可食部分は少ないですが、味と旨味はかなり濃いですね。活けのガザミを茹でるには、水からでないと足が切れてしまうので注意が必要です。茹でるより蒸した方が旨いと思いますが、その際は足を輪ゴムなどで括り、腹を上にして蒸気が上った状態から15分ほど蒸します。

北海道から台湾まで広く分布し、波が穏やかな内湾の水深30m程までの砂泥底に生息します。メスは冬から春にかけて生殖腺が発達し、内子(卵巣)が美味。


活け〆渡り蟹

栄養面では他のカニと殆ど同じでかなりヘルシーな食材。
特に高い抗酸化作用を持ち、老化予防、生活習慣病予防、光障害から目を保護するなどで知られる「アスタキサンチン」(カロテノイドの一種)を殻に含んでいます。ですから出来れば殻も食べたいものです。

ソフトシェルクラブ

そこで注目されるのがソフトシェルクラブ(Soft shell crab)
ソフトシェルクラブは種名ではなく、ソフトシェルクラブという名前のカニが存在する訳ではありません。脱皮直後のカニか、それを揚げた料理の事です。

*アメリカ東部に生息するブルークラブ(アオガニ)やノコギリガザミなどのワタリガニ科のカニを主に指してます。


ソフトシェルクラブ

サクラエビ(桜海老)

桜海老は春と秋の限られた期間だけ漁が行われ、日本では駿河湾でしか獲れない貴重な海老です。
天ぷらやお刺身でどうぞ


サクラエビ

シロエビ(白海老)

白海老(シラエビ、シロエビ)は、身の白さが特徴の小エビ。
4月から晩秋まで、主に富山湾で獲れる。

桜えびの代用品としての位置づけですが、独自の風味があり、品の良い白さと淡い甘みをいかしたお造りなど利用範囲も広いです。ポイントはやはり「白」を強調することでしょうか。


お刺身しろえび

ワカメ(和布)

ワカメは、古代から日本人に馴染みの深い海藻です。
現在でも日常的に食べられている食材のひとつ。

ワカメはいわゆる「栄養」が非常に少ない。
目立つものはビタミンKとヨードくらいのもの。
しかしそこが良いのです。
食物繊維によって「体の内部をきれいにする」食品だからです。
「食べ過ぎの現代人」にピタリの食品と言えましょう。

旬は春から初夏にかけて。

ワカメは、古代から日本人に馴染みの深い海藻です。
現在でも日常的に食べられている食材のひとつ。

ワカメはいわゆる「栄養」が非常に少ない。
目立つものはビタミンKとヨードくらいのもの。
しかしそこが良いのです。
食物繊維によって「体の内部をきれいにする」食品だからです。
「食べ過ぎの現代人」にピタリの食品と言えましょう。


若布

メカブ(芽株)

メカブ/芽株は、ワカメの生殖器官(胞子葉・成実帯)

古代、701年の大宝律令に、若布は「ニギメ」、芽株は「マナカシ」と記されており、価値のある物だった事が窺えます。

現在、メカブに多く含まれるフコイダンには抗癌・肝機能回復・抗アレルギーなどの作用があることが分っています。食物繊維やアルギン酸等も豊富で動脈硬化や心筋梗塞、血中コレステロール値正常化にも確かな効果があるでしょう。

それ以前にワカメっていう海藻は日本人のみそ汁と酢の物になくてはならない海の幸。ちょっと意外なのはその日本よりも朝鮮半島の人がワカメを沢山食べてる事実。

天然の「メギ」が採れる磯などは貴重な不動産で一族の財産であるとか。 ところがワカメを食用にするのはこの二国のみ(中国は刺身同様近年)
その他の国では日本におけるブラックバスやアライグマなみ。つまり迷惑な外来種でしかない様です。日本の船などが運ぶ種子で繁殖して侵略的外来種にされているらしい。

ワカメの旬は春から初夏ってところ。
メカブが出回るのは短い間だけです。

くすんだ茶色が、湯に通すと鮮やかな緑に変わります。

メカブ

メカブ 芽株

ヒジキ

ヒジキ(鹿尾菜)は、昔から体に良いとされる海藻で、今では栄養学でそれが証明されています。

特に脂肪過多の人には理想的な食材。フコキサンチンや食物繊維などを含んでいるからです。また、塩分心配症の人にもおすすめのカリウムバランス。

カルシウムもビタミンも理想的ですが、ビタミンC豊富な材料で合わせて食べると完璧になります。鉄分をスムーズに吸収させるため、野菜や肉との炒め煮などにすると良いでしょう。


ひじき

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