秋の海老、蟹、貝
イセエビ(伊勢海老)
イセエビ(伊勢海老):エビ目イセエビ科イセエビ属
別名「カマクラエビ」
イセエビは歩行するタイプのいわゆる「海老」になります。
(※遊泳タイプの小エビ類は「蝦」と表記)
クルマエビと並んで高級エビの代名詞なっており、特に伊勢は鎧兜で身を固めたような立派な姿から昔から祝い事に欠かせせない。
身はもちもちして弾力があり、甘味も強い。
姿盛りのお造りにしたり、汁にしたりするのが一般的ですが、カニと同じく、一番美味しく食べる方法は「蒸し」だと思います。やり方もカニと同じで、暴れないようにしばってそのまま15分程度蒸すだけ。味付けもしません。カニやエビはそれ自体が持つ塩分で最高の甘みが出るからです。
産卵期は夏ですが、出回るのは晩夏から秋。
夏から秋が旬だということです。
※現在は世界中から輸入されるため、「食べごろ」という意味での旬は消えてますので、これは国産限定
最需要期は正月を控えた12月です。
イセエビ属は南半球のミナミイセエビ属を含め世界中に分布しておりますが、日本国内で「伊勢海老」と呼ばれるものは【かのこいせえび】【けぶかいせえび】【ごしきいせえび】【にしきいせえび】【しまいせえび】などを指しており、これは茨城県あたりから南限は台湾あたりまで。これらはそれぞれ斑紋などに特徴があるため、専門家は簡単に識別できます。
それ以外の「イセエビ属」「ミナミイセエビ属」はロブスターと称しますけども、活で輸入されたりする物もあり、一般人が識別するのはまず無理ですね。
ましてボイルした物だと専門家でも見分けるは難しいでしょう。したがって業者のモラルに任せるしかない状態です。
しかし、冷静に考えてみますと、国産の伊勢海老が輸入よりも特別に美味しいというのは間違いであって、オーストラリラ等の物が総合的に上だったりするのが事実です。それでも国産信仰は根深く、「実質を越えてブランドがひとり歩きする」という現象が消えません。ここらへんに「偽装表示」が氾濫する因子があるのでしょう。
※輸入物もイセエビ属であり、別称がイセエビとなっているものが多いので、「伊勢海老」と表記しても偽装でも誤表記でもありません(ここが様々な名称がある食材の困った点ですね)
ロブスターとオマール
大型の歩行型エビ全体を、ロブスター (Lobster)と総称します。
日本のイセエビのようなタイプはSpiny lobster(スパイニーロブスター)
狭義には同じイセエビ属で外見上はまったく日本の伊勢海老と同じに見える「アメリカイセエビ」「「ヨーロッパイセエビ」「オーストラリアイセエビ」、それに「ミナミイセエビ類」、これらのものをロブスターと言います。
オマールは、アカザエビ科ウミザリガニ属の「アメリカンロブスター」など大きなはさみ脚を持っているもの。
つまり、はさみ脚のある大型はオマールエビ。ハサミがないものがロブスターと呼ばれます。
しかしオマールもロブスターと呼ばれるので、総称なのです。
シバエビ(芝蝦)
シバエビ(芝蝦):クルマエビ科シバエビ属
芝蝦の名は東京港区の芝のあたりでよく獲れたからです。 東京湾、瀬戸内海、有明が主な産地で、その昔は大正エビとシバエビが消費量の1~2位だった時代もありましたが、今はあまり見なくなってしまいました。
江戸前寿司の「オボロ」とか「玉子焼き」はこの海老をすり身にして加えるのが伝統。
しかし今の東京湾で江戸前ってのはなかなか・・・
産卵期は春~夏場、漁期は秋~冬場って感じで、旬は秋ごろでしょうが地域差があり、また東南アジア産の輸入もあります。
手長海老(スカンピ)
子供の頃手長エビを川でつかまえて食べた経験をお持ちの方はけっこう多いのではないでしょうか。
産卵期は初夏から9月半ばまで。
秋の声をきいたころが旬で、冬には成長が止まります。
ハナサキガニ(花咲蟹)
花咲ガニはタラバガニと同じくカニ類ではありません。
カニに比べ足の数が少ないヤドカリの仲間。
根室半島(花咲半島)で多量に獲れたということから花咲ガニ。
ボイルして真っ赤に発色した姿もまるで花が咲いたように見えます。
モクズガニ(藻屑蟹)
もくずがに(藻屑蟹)は「ツガニ」「ズガニ」など地方で呼び名は変わりますけども、【川ガニ】と言えばこの「モクズガニ」です。
ハサミに毛があるのが特徴で、日本全国北海道から沖縄まで、自然の残る綺麗な川に生息する代表的なカワガニですね。
自然が身近にある環境で育った方は、このカニに何かしらの思い出を持っているのではないでしょうか。
海に下り産卵して戻ってくるカニですので、当然ですが自然が破壊された川にはもういません。
食べ方は色々ですが、「がん汁」が最高。
ガンとはカニのことです。
茹でる時は、水から茹で始めるのが基本です。
ムール貝・パーナ貝
ムール貝の和名は「ムラサキイガイ(紫貽貝)」
パーナ貝(もえぎ貝)、ミドリイガイ、なども含めて紫イガイの仲間すべてをフランス風のmoule(ムール貝)と呼びます。
湾内のあらゆる場所にカキの様にへばり付き、大量繁殖するので漁師や港湾施設の関係者には有害な貝とされます。 和食では殆ど使う事がなく、もっぱら洋食用の貝です。
パエリヤ、ボンゴレ、オードブルなど。
代用としてよく見かける「パーナ貝」は、主にニュージランド産の「もえぎいがい」で、東南アジアでよく見るものは「みどりいがい」です。二種とも外見はそっくりで、ムール貝と同じように料理されています。
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