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玉鋼の包丁とは

玉鋼包丁

玉鋼とは一言でいえば日本刀の材料に使う特殊鋼です。

よく{玉何々鋼**包丁}と紛らわしい名を付けた安い包丁が販売されていますが、包丁初心者は勘違いなさらぬようにして下さい。

玉鋼製包丁の入手は限りなく不可能に近い困難さです。一般的な販売はまずありません。

玉鋼

中国地方の山間部に産する砂鉄を原料とし、千年以上の歴史を持つ【たたら】という製鉄法で造られた和鋼(純鉄/炭素合金)を【玉鋼】と称します。 (現在は【特殊鋼】に属します)
特殊鋼を詳しく知りたい方は 日立金属 特殊鋼ってなに

その玉鋼もさらに6~7等級に分類されています。
たたら製法で出来た鋼は良質部分を玉鋼とし、屑を他の用途に回します。

その屑のなかでも下のほうにランクされるのが【包丁鉄】、この意味で包丁鉄が玉鋼といえるのかどうか難しいところで、やはり1級か2級で造られたのを玉鋼包丁と呼ぶべきかと思います。

もし市販品の玉鋼包丁があるとしたら、まず間違いなく包丁鉄製で、しかも合わせだと考えていいでしょう。値段ですぐに分かることです。

しかしその『たたら』も一時完全に途切れました。長い間玉鋼は製造されなくなったわけです。 1977年に奥出雲の『日刀保たたら』が建設され、たたらは再開されましたが、ここで作られる玉鋼は日本美術刀剣保存協会が日立金属に受託生産させているのです。ですから当然日本刀専用です。

財団法人日本美術刀剣保存協会

ですので、現在玉鋼を入手できるのは【刀匠】だけになります。

では玉鋼の本焼包丁は存在しないのかといえば、存在します。

たたらの火が消える前に製造された物、もしくは刀匠が造った物。この二種があります。

刀匠に頼めば打ってもらえるのかというと、簡単ではないでしょう。包丁式に使う式包丁など、何か特別な理由でもない限りは無理かも知れません。

昔造られた個人所有の逸品がヤフオクや楽天オークションに出るのを待つか、あるいはたたらの技術を持つ人が自作した物を探してみるか。中には包丁屋を兼用してる刀工もいたりします。本場の出雲地方に出かけてあちこち探すと意外と掘り出し物があったりもします。

しかし注意すべきは本物か偽物か容易に判別できないということ。つまり余程信頼できる相手でなければ、買うのを熟慮すべきであると。 安過ぎるのも、高すぎるのも不自然だと思っておいたほうが良いです。

やはり昔の和食職人がやったように、刀匠をあたってみるのが一番確かだと思います。

全日本刀匠会 地方支部一覧

なお、入手可能な包丁で一番玉鋼に近い感触を得ることができるのは、青紙SPの本焼か白紙1号だと思います。しかし青紙スーパーの本焼は幻に近いものがありますので、白1号の本焼に限定してもいいですね。切れ味の面では玉鋼に遜色ないと思いますよ。

考えるべきことは、「日本刀に向いている鋼が包丁にとっても良いと言えるのか」ということ。 自分は「適材適所」だと思っており、そもそも用途がまるで違うという考えです。包丁は包丁、刀は刀だということですよ。今の世では美術品でしかありません。

要点をまとめると

・現在の玉鋼は日本刀製作者向けに少量だけ生産

・日本刀愛好家は世界中にいて、需要がある

・日本刀と包丁は値段の桁が違う

・従って、刀匠がわざわざ玉鋼で包丁を打つ理由が無い

・結果として本物の玉鋼包丁は市場に出ない

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