天然砥石とは
天然の砥石は産地や採れた場所(鉱山)で粒度や硬度が違ってきますし、切り出された箇所によっても性質が異なってきます。天然物なので基本的に「同じものは二つとない」のですから、ある意味当然ですね。
(※独特の粒度と硬軟で区分されている場合もありますが、業者によって尺度が違いますので、販売業者にお訊ねください。サイズは○○型で表示してあることが多く、一般的な大きさは40前後になります。しかしこれも統一ではないし、寸法はあってないような所も天然砥の特徴でもありますし、番の揃ったものは昔と違い多くありません)
天然砥石のことをもう少し詳しく知りたい方は、下の刃物フルタさんのページが参考になります。分かりやすく、しかも詳しく説明されています。
天然砥石の在庫は不安定
天然砥の生産は極めて少なく、「在庫が売れたら終了」というのが近年の傾向です。したがいまして下記で紹介する石も現時点の在庫は不明ですのでご了承ください。
流通は常に流動的でいつ頃どういう品が出るか分かりませんので、最新の出物をチェックすることをおすすめします。天然砥石 Amazon
菖蒲砥石
菖蒲谷(しょうぶたに)は本山※で一番最初のヤマだとされます。
硬質ですが種類が多く、包丁に合うものが多いです。
※ 仕上げ石としての優れた性質を持つ珪質の天然砥石は世界でも京都と滋賀の一部にしかなく(これが合砥)、億年単位の地殻変動がもたらした奇跡のようなものです。
この希少な京都の砥石鉱脈を「本山」と呼び、その由来は800年前の人、本間藤左衛門にあるといいます。本間の山、つまり「本山」です。(現在、本山は合砥を指す)
鳴滝砥石
鳴滝砥は、中山、菖蒲、大突、奥殿近郊の鳴滝で採掘された砥石です。
やや硬質であり、仕上げや小刃合用。
奥殿砥石
奥殿(おくど)は中山系の硬いもの。
硬質で、包丁にはどうかと思いますが、モノ次第使い方次第でしょう。鏡面目的なら良いモノもあります。
大平砥石
大平鉱山は京都砥石鉱脈の中央あたりにある愛宕山付近。昔から刀剣の研ぎに最適な石が多いことで知られます。
包丁研ぎにも優れた砥石で、特に内曇は波紋がよく出ます。
戸前・色物がちょうど良く、硬質の浅黄・並砥にしても使い方次第です。
日照山砥石
日照山(ひでりやま)は本山北部にある鉱山。
粒度は愛宕と同じくらいです。
京砥にしては軟質で、包丁には抜群の砥石ですね。
大突砥石
京都梅ケ畑の大突(おおづく)砥は種類が豊富な合砥です。
大工道具の鉋などに適しますが、実は和包丁の仕上げにも良いです。
愛宕砥石
愛宕、もしくは愛宕山は、木工用刃物に適した天然砥です。
包丁でしたら上仕上げや二度合わせに。
合砥のなかでは粒度が低く研ぎ感がよい。
愛宕鉱山は京都嵯峨清滝で、京都砥石山脈の中央。
木津山砥石
粒度は本山と大突の中間。
合砥の中でも硬い方です。
対馬砥石
p>対馬は中砥に近い研ぎ感をもつ仕上げ砥石です。
ハサミ研ぎや漆磨きにまで使用される重宝な砥石。包丁研ぎにも非常に良い。仕上げとしての硬さもあるし、刃乗りがよい柔軟さもある。研削力と研磨力のバランスが優れているということです。
他の天然砥の面をみがく名倉としても三河に匹敵する名品。
青砥
青砥は合砥(仕上)の京都本山鉱脈で例外的に採れる中砥です。
主産地が丹波の中心地(亀山)であった亀岡なので「丹波青砥」。これは人造砥の「青砥」との違いを表す呼び方にもなります。
中砥とは言っても、3000~5000番程度であり研ぎ感はほぼ合砥。
つまり中砥と仕上げの兼用ができるわけで、お得な天然砥といえます。 (精密な刃をつけたい方は別の仕上げ砥で合わせるようにしてください) 使ってみての感触によって使い方を微調整しましょう。
油分を含んだ砥汁が出て包丁の滑りがよく、研いでいて気持ちがいいです。 「研いでいる感」がある天然砥なのです。
赤門前砥石
赤門前砥と言えば今は人造砥が主流で、これは青砥と同じ。
人造砥(コピー)が作られるのは研ぎ味が良いからで、これも青砥と同じ。
研ぎ感も非常に青と似ている(やや赤のほうが粒度が低い感じ)
青砥と同じく京都には珍しい中砥。やはり亀岡あたりの産です。
国内の何処にどれだけの量の在庫があるのか存じませんが、時間の問題でしょう。 寂しい話です。
伊予砥石
古代日本共におこり、一番初めに流通した伝統ある天然砥石です。砂岩が固まってできた石で、砥ぎ出すと細かい粒が出ます。最初は荒く感じますが、徐々に粒子が細かくなり、仕上げのりが良い状態にしてくれます。中仕上~本仕上クラスの石が出ます。また、色々な色・模様がでるのもこの石の特徴であります。また、平成20年採掘師が復活させたばかりの山ですので、今後が期待されます。
みきかじや村
天草砥石
天草砥は熊本県で採掘される天然砥で、天然砥石としては流通量が多い。
そのぶん価格が手頃であり、人造砥とさして変わらぬ値段で入手できます。
粒度は1000番前後であり、この面からも非常に扱いやすい。
虎縞模様が入った「虎砥(赤)」と、白色の「備水(上白)」がある。
備水の方が上質であり包丁にはこちらがおすすめ。
しかし用途によって虎砥も充分使える。家庭用ならこちらで事足ります。
大村砥石
元々は長崎の大村で採掘されいたのでこの名。
長崎が終わり、同質の石が採れる和歌山県白浜で採掘されているものです。
これももう採掘終了になってしまったようで、まことに残念至極。
数十年前は比較的安くで、どこにでもあったものです。砂岩であり、天然の荒砥としては無二のものでしたが・・・
荒砥なら人造砥がいくらでも代用できるということもあるかも知れませんね。ナニワが「 ニュー大村 」という良いモノを出してますし。
和歌山では他に「茶目砥」という荒砥があります。
これも含めて長崎の平島、佐賀の笹口などもなかなか見つかりません。
天然名倉砥石
大きいものは刃物研ぎに良いが、もうサイズのあるものは入手が困難。
もっぱら名倉として有名。その名倉クラスも減っています。
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